アパート経営

アパート経営の固定資産税はいくらかかる?計算方法・節税・軽減措置について徹底解説

2023年2月22日

土地活用の方法として人気なのが「アパート経営」です。安定した収入を長期的に得られる点や節税対策になる点がとても魅力的です。アパート経営を機に、税金について知識を深める人も多いのではないでしょうか。しかし、税金に関しては情報や制度が複雑で、知識習得に最初は抵抗があるかもしれません。

今回の記事では、税金に関する知識習得の第一歩として、「固定資産税」に焦点を当て、解説をしていきます。「固定資産税」は、アパート経営をする場合、必ず発生する税金なので学んでおく必要があります。

「アパート経営を考えているけど、税金に関することは今から勉強する」「固定資産税について知りたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

アパート経営にかかる固定資産税について

アパート経営をする際は、毎年「固定資産税」の支払いが義務付けられています。

そのために抑えるべき最初の知識として、ここでは固定資産税の「計算方法」・「節税対策」・「軽減措置」について詳しく解説していきます。

固定資産税とは?

固定資産税とは、「所有する固定資産に対して課せられる税金」であり、地方税の1種です。納められた税金は、各市町村の状況に応じて公共施設の設備や行政サービス(介護・福祉等)に使用されます。

以下は、固定資産税の詳細です。

固定資産の種類 3種類(土地・家屋・償却資産)
課税者 固定資産が所在する市町村(東京都23区内の場合は東京都へ納める)
納税義務者 1月1日時点で固定資産を所有している個人・法人→引き渡し以降分に関しては、前所有者と購入者との話し合いで負担を配分するのが一般的。
納税期間 4月〜翌年3月分までを支払う
納税額 課税標準額×税率
納期 一括払いor年4回分納
固定資産税評価額 固定資産評価基準にもとづき、

各自治体が設定する。

3年に1度、固定資産の評価額の

見直しを行う。

支払い方法 銀行振込・コンビニ支払い

一部クレジットカード可

より細かい部分は市区町村によって異なるので、納税前に該当する市区町村のHP等で情報を確認しましょう。

固定資産税の計算方法

固定資産税の算定方法は以下の通りです。

課税標準額 × 税率1.4% = 固定資産税額

税率は原則1.4%ですが、自治体によって多少変動があります。上記の計算方法をもとに、場合によっては軽減措置等が適用される仕組みです。「課税標準額」の定義は、対象となる固定資産によって異なります。

対象 「課税標準額」の定義
土地 地目(土地の用途→例:田や畑、宅地)別に、売買実例価格等を基礎として計算されたもの。
建物 「課税標準額」=「固定資産税評価額(固定資産税台帳に記載された価格)」

また、固定資産税自体が非課税となることもあります。課税標準額が、土地では「30万円未満」、家屋では「20万円未満」の場合、課税されません。

固定資産税評価額の目安

固定資産税評価額とは、「固定資産税を賦課するための基準となる評価額」のことです。固定資産税評価額の目安は、「土地」と「建物」の場合で異なります。

  • 土地:地価公示価格の約70%、もしくは実勢価格(実際に販売されている時価)の約80%
  • 建物:建築費の約50〜70%

地価公示価格とは、国土交通省の土地鑑定委員会によって決定される基準価格のことです。

固定資産税評価額は各自治体が決めており、自治体の担当者が固定資産税評価額を1軒ずつ計算して定めています。膨大な数の土地や建物を見直すため、評価は「3年に一度」行われ、そのことを「評価替え」と呼びます。

それ以外の年度は原則据え置きです。ちなみに前回の評価替えは2021年に行われているため、次回は2024年に行われます。固定資産税評価額が変わる場合は、土地であれば「土地がある場所や形」、建物であれば「築年数や構造、家屋の大きさ」が主な要素として挙げられます。

アパート経営によって固定資産税を節税できる

固定資産税は決して安いものではありません。しかし、アパート経営であれば固定資産税を節税することができます。いわゆる「軽減措置」と呼ばれる制度が用意されているので、紹介していきます。

固定資産税の軽減措置とは?

「住宅用地に対する固定資産税の課税標準を減額する特例」のことを、固定資産税の軽減措置といいます。

土地(住宅用地)に対する軽減措置

土地(住宅用地)に対する固定資産税の軽減措置は、以下の通りです。

基準 税率
小規模住宅用地(※1) 固定資産税評価額×1/6 1.4%
一般住宅用地(※2) 固定資産税評価額×1/3 1.4%

※1→住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分
※2→小規模住宅用地以外の住宅用地(200㎡を超える部分)

この軽減措置に関して期限は定められていません。

その他にも、「長期優良住宅」であれば、より良い軽減措置を受けることができます。

建物に対する軽減措置

建物に対する固定資産税の軽減措置は、以下の通りです。また、以下は「2024年3月31日」までに新築された住宅に対する内容です。

基準 税率
戸建て住宅 3年間 固定資産税額(※2)の1/2を減額 1.4%
マンション等(※1) 5年間 固定資産税額(※2)の1/2を減額 1.4%

※1→3階建て以上の耐火・準耐火建築物
※2→1戸あたり120㎡相当分までを限度

土地に対する軽減措置と同じく、「長期優良住宅」の場合は上記内容と異なります。

駐車場を住宅用地扱いできる

駐車場が住宅用地として扱われる場合があります。それは、駐車場と住宅用地を一体化している(=駐車場の利用者がほぼアパートの住民であること)場合です。

住宅用地の特例として認められれば、軽減措置が適用され、固定資産税評価額が1/6に減額されます。軽減措置を受けるためには、「駐車場の利用者がアパートの住民であること」を証明しなければなりません。証明といっても難しいものではなく、アパートと駐車場の契約書で対応できます。

契約書と合わせて、該当する市区町村用の「固定資産税の住宅用地等申告書」を合わせて準備しましょう。

空き家も軽減措置を受けられる

空き家も軽減措置を受けられる場合があります。そのためには、「特定空き家」の対象外になる必要があります。「特定空き家」に指定される可能性がある要件は、主に以下のようなものです。

  • 倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態の空き家
  • 著しく衛生上有害となるおそれがある状態の空き家
  • 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態の空き家
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の空き家

実際に「特定空き家」に指定される流れは以下の通りです。

  1. 空き家の調査
  2. 「特定空き家」に指定
  3. 助言・指導→この時点で状況を改善すると「特定空き家」から解除される。
  4. 勧告
  5. 命令→従わない場合には罰金が科される。
  6. 行政代執行→自治体が空き家を取り壊すこと。その取壊費は所有者に請求される。

以上のような流れで行われます。「特定空き家」に指定されないための管理をし、軽減措置に該当するかの確認をしましょう。

更地に新築アパートを建ててもその年は軽減措置の対象にはならない

更地の場合は、軽減措置が適用されません。ただし、「住宅の建て替え中」に関しては、この限りではありません。

「更地」という状態を避けられない場合も発生するでしょう。その場合は、一定要件を満たせば、特例として軽減措置を利用できます。

東京都主税局によると主な要件は以下の通りです。

  • 当該土地が、前年度も住宅用地であったこと
  • 住宅の建て替えが、建て替え前の敷地と同一の敷地において行われるものであること

一方、更地に新築アパートを建てる場合は特例として認められないため、軽減措置の対象にはならないので注意しましょう。

アパート経営にかかる固定資産税を減らす方法

軽減措置以外にも、経営という部分に焦点を当てると、固定資産税を減らす方法が4つあります。アパート経営以外にも、ビジネスをおこなう際に役立つ情報が含まれているので、ぜひ参考にしてみてください。

経費をきちんと計上する

経費の計上によって、節税が見込めます。それは固定資産税の課税対象が以下のように計算できるからです。

固定資産税の課税対象(不動産所得)=収入ー経費

経費をきちんと計上し、所得を減らすことが固定資産税額の減額に繋がります。以下のような費用は、「経費」として計上可能です。

  • 減価償却費:建物や設備の経年による価値減少に相当する額
  • 借入金利息:アパートローンを返済する分のうち、利息分にかかる費用
  • 修繕費:アパート等への維持管理費用(ペンキなどの塗り替え等)
  • 租税公課:アパート等を所有することによって発生する税金
  • 通信費:アパート経営に関係して利用した電話やインターネットにかかる費用

他にも、管理費や損害保険料、弁護士に支払う報酬なども経費として計上できます。

青色申告をして特別控除を受ける

アパート経営の確定申告をする際に、「青色申告」を行うと、最大65万円の特別控除を受けられます。青色申告をするためには、「開業届」と「青色申告承認申請書」を事前に税務署へ提出する必要があります。規模の大小に限らず、事業として成立している状態であれば、一度提出することを検討しても良いでしょう。

また、副業でアパート経営を行っている場合、本業の給与所得と不動産所得を合算して確定申告すると、還付金を受け取れる可能性があります。給与所得のプラスと不動産所得のマイナスが相殺される仕組みとなっているためです。

節税対策する上で、青色申告は最初に考えるべき方法とも言えるでしょう。

法人化を検討する

アパート経営の規模が大きくなってくると、法人化した方が節税対策になる可能性が出てきます。法人化するかどうかの基準は、「他の所得と合わせて1,000万円を超えるかどうか」です。

法人化すると以下のようなメリットがあります。

  • 所得税の軽減
  • 経費として認められる範囲が広くなる
  • 相続時の遺産分割がしやすくなる
  • 赤字の繰越期間が個人よりも長い

経営規模が拡大する見込みの時は、一度法人化することを検討してみましょう。

固定資産税をクレジットカードで納付する

一部の自治体では、「クレジットカード」での納付に対応しています。固定資産税自体が安くなるわけではありませんが、以下のようなメリットが見込めます。

  • ポイントの付与
  • 自宅から24時間いつでも納付可能
  • 後払いや分割払いが可能
  • 支払い日を容易に確認でき、家計管理がしやすい

自治体やカードの種類によっては、ポイント還元率や手数料に違いがあります。クレジットカードでの納付を検討している際は、事前に確認を行いましょう。

アパートの固定資産税はいつ払う?

固定資産税を支払う際、自治体から事前に振込用紙と納税通知書が届きます。納付には期限があり、期限を超えると罰則が課せられます。

書類が届くまでに、納付期限や罰則について事前に把握しておきましょう。

自治体によって支払期日が異なる

振込用紙と納税通知書は自治体問わず毎年4月から6月頃に届くのが一般的ですが、支払期日は自治体によって異なるので、注意しましょう。

納付に関しては、一括払いもしくは年4回の分割払いのどちらかを選択できます。支払回数で納税額が変動することはありません。分割払いの場合は、第1期〜第4期まで指定されていますが、時期は自治体によって異なります。

支払方法は、コンビニ等での現金払い・クレジットカード口座振替が一般的ですが、ネットバンキングやペイジー決済に対応している自治体もあります。

納税通知書には、固定資産税の納税額や納付期限、可能な支払方法が記載されています。届き次第、まず納税通知書を見て詳細を確認しましょう。

固定資産税を払わないとどうなる?

固定資産税の納付期限を過ぎてしまうと、地方税に基づいた延滞金が科せられます。

延滞金は納付期限の翌日から納めた日までの「日割り計算」で定められるため、納める日が延びるほど納付額が増えていくので注意しましょう。

納付期限の翌日から1ヶ月までに支払えば、「特例基準割合+年1%」が延滞金です。例えば、特例基準割合が1.5%であれば、年2.5%の延滞金を支払わなければいけません。また、延滞金の利息は自治体によって異なるので確認が必要です。

納付期限の1ヶ月後までに固定資産税を納めなかった場合は、より高額になるように設定された計算で延滞金が発生します。以下のような計算をされます。

【特例基準割合に年7.3%を加算】
例:特例基準割合が1.5%であれば年8.8%

督促状が届くケースもあるので注意が必要です。督促状が届いても納付に応じない場合は、財産や給与が差し押さえられる可能性があります。深刻な状況に陥る前に、固定資産税は期限内に納めるようにしましょう。

アパート経営にかかる固定資産税の注意点

アパート経営にかかる固定資産税を納めるうえで、注意すべき点が3点あります。

注意点を押さえないと税金を納め過ぎてしまったり、いつの間にか固定資産税が高くなっていたというケースに陥りやすいです。

そうならないために、1点ずつ解説していきます。

過払いがないか固定資産税納付書をチェックする

注意点としてまず挙げられるのが、固定資産税の過払いです。間違った金額が納付書に記載されており、そのまま納付してしまうと必要以上に税金を払うことになってしまいます。

固定資産税の通知は各自治体が行っています。全国の自治体(約1,480団体)を対象に行った平成21年度~23年度の「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」では、全体の約97%の自治体で1人以上の税額修正が行われたことが判明しました。

つまり、ほとんどの自治体で税額修正が行われており、税額修正の対象になる可能性も充分あります。

最大15年前まで遡って過払い金を還付してもらえるので、過去の固定資産税納付書を確認し、払い過ぎていないかを確認しましょう。

チェックの仕方

引用元:川崎市

固定資産税額は各自治体が定めているため、記載内容が正しいものかそれぞれ確認しましょう。

  • 記載内容に誤りがないか→⑤課税標準の特例等、土地の地目や家屋の種類・構造等
    ※特に「⑤課税標準の特例等」は軽減措置の適用に関わる重要な項目のため、入念に確認が必要
  • 面積→登記事項証明書(もしくは登記簿謄本)と照らし合わせながら、登記面積と課税明細書に記載されている面積が一致しているかを確認
    ※「課税明細書の面積」が「登記簿上の面積」より大きければ、固定資産税を過払いしている可能性あり
  • 軽減措置が適用されているか→地方税法で定められた規定内容に則り、所有しているアパートがどのように適用されるかを確認

還付手続きの方法

税額が誤った数字であれば、まず該当する自治体へ審査を申請しましょう。申請方法は、誤っている数字が以下のどちらかで、流れが異なります。

  • 固定資産税評価額
  • 固定資産税評価額以外(税額など)

詳細は自治体によって異なるので、該当する自治体の申請方法を確認しましょう。

また、固定資産税の過払い分を還付してもらうためには、還付請求が必須です。承認が下りれば、最大7.3%の金利を含めた金額が還付されます。

オーナーが死亡しても固定資産税は免除されない

オーナーが死亡した場合でも、固定資産税は引き続き課税されます。その場合は、相続人が納税義務者です。相続人が複数いる場合は、代表相続人を決めた後、「相続人代表者指定(変更)等届」を該当する自治体へ送らなければいけません。その後、代表相続人宛に納付書が届きます。

「相続人代表者指定(変更)等届」自体は、アパートに居住している相続人がいれば、その人宛てに優先的に送られる傾向があります。誰も住んでいない場合、その市区町村内に住民登録している相続人に送られてくることが多いです。

「相続人代表者指定(変更)等届」は、あくまで各自治体が「納税通知書」の送り先を明確にするための届出という認識をもっておきましょう。

アパートの建材や設備に注意しよう

アパートの大きさや面積を変えていなくても、内装の設備を変えた際に固定資産税が上がってしまう場合があります。主に上がりやすくなる設備は以下の通りです。

  • 壁付けエアコンより天カセエアコンが上がりやすい
  • オール電化よりガス併用住宅が上がりやすい
  • システムキッチンへ変えると上がりやすくなる
  • 複雑な工法が用いられている建物
  • 金額が張る建材を使用する
  • 免震装置の強化
  • エレベーターの設置
  • スライディングウォール(可動式の間仕切り)の設置

リフォームした場合は、そのアパートの価値が単純に上がったという評価になるため、固定資産税も自ずと上がる可能性が高いです。

設備の変更は固定資産税を上げる原因へと繋がるため、しっかり検討しましょう。

まとめ

今回は、固定資産税の計算方法・節税・軽減措置等について解説しました。

「固定資産税」という言葉自体が難しく、最初は抵抗があるでしょう。調べながら自分なりに解釈していくことで、理解が深まる内容だったのではないでしょうか。固定資産税は基本的に他の税金と比較すると高額で、長期的なアパート経営を考えると懸念点として浮上しやすいです。

固定資産税が高いと感じたら、今回紹介した内容を見返してみてください。アパート経営を長期的に維持するために、定期的に固定資産税について見直してみましょう。