アパート経営

公務員でもアパート経営はできる?知っておきたい条件や注意点など徹底解説

2023年2月24日

公務員は副業が禁止されています。違反してしまうと減給などの処分を受ける可能性もあります。しかし、一定の条件の下であればアパート経営を行うことが可能です。

そこで今回は公務員の副業が禁止されている理由や、公務員がアパート経営を行う場合のメリットなどを詳しく解説していきます。併せて気を付けたい注意点についてもまとめたので、アパート経営を検討している公務員の方は参考にしてみてください。

目次

公務員でもアパート経営することができる?

公務員は原則副業が禁止されていますが、一定の条件を満たせば不動産投資とみなされアパート経営が可能です。しかし、その条件を超えた規模でアパート経営をしてしまうと違反になるため、減給や最悪の場合は懲戒免職などの処分を受ける可能性も大いにあります。

また、職種や属している自治体によっては、特別な規則が設けられている場合もあります。そのため、アパート経営を始めようか検討している公務員は、まずは職場で相談してみましょう。

公務員の副業が禁止されている理由

公務員には国家公務員と地方公務員の2種類が存在します。

国家公務員は、1府12省庁職員や労働基準監督官、外交官や裁判所職員などが該当し、国家公務員法第103条および第104条によって、国家公務員の副業は禁止されています。

一方、地方公務員は、警察官や消防官、市役所勤めの方や学校の先生などが該当し、地方公務員法第38条によって、地方公務員の副業は禁じられています。

そもそもなぜ公務員の副業は禁止されているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

国家公務員の場合

国家公務員の副業の禁止は以下の国家公務員法によって定められています。

【国家公務員法 第103条(私企業からの隔離)】
“職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。“
引用元:電子政府の総合窓口e-Gov「国家公務員法103条」

【国家公務員法 第104条(他の事業または事務の関与制限)】
“職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。“
引用元:電子政府の総合窓口e-Gov「国家公務員法104条」

上記2つの法規定により国家公務員は、営利目的で民間企業や団体への役職業へ関わることおよび営業が禁止されています。内閣総理大臣とその職員の管轄庁の長が許可をした場合は行えることもありますが、ハードルは高いです。この法規定から一般的に国家公務員は副業をすることができません。

地方公務員の場合

地方公務員も国家公務員と同様に、地方公務員法によって副業の禁止が定められています。

【地方公務員法 第38条(営利企業との従事制限)】
“職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。 “
引用元:電子政府の総合窓口e-Gov「地方公務員法38条」

一般的に公務員は全てにおいて営利目的とした私企業に務めることができません。上記の条例に違反した場合、減給や最悪の場合懲戒免職になる可能性があります。

ちなみに減給は一定期間の給与を減らす処分で、懲戒免職は職を失わせる処分になります。とても重たい罰則で今後の昇給や出世にも影響が出ることもあります。

副業禁止の3つの原則

公務員の副業が禁止されている理由を裏付ける3つの法規定もあります。

  • 信用失墜行為の禁止
  • 秘密を守る義務
  • 職務に専念する義務

過去にはこの法規定に違反したため、減給処分を受けた公務員もいました。それぞれどのような内容なのか詳しく見ていきましょう。

信用失墜行為の禁止

信用失墜行為の禁止は、就いている仕事の信用を傷つけたり不名誉となるような行為を行ったりしてはならないという法律のことです。

たとえば、公務員が何か事件を起こしてしまったとしましょう。その人の信用はもちろん、その人が就いている自治体の信用も落としてしまう可能性があります。

自治体が国民からの信頼を失うと、どれだけ良い政策をしても誰もその政策に賛成しようと思わないでしょう。そのため、公務員が自治体の信用を落とすような行為をしてはいけないとされているのです。

秘密を守る義務

秘密を守る義務は、職務上知った情報を現職中や退職後に漏らしてはいけないという法律になります。

公務員は仕事で得た情報を世に出回る前に漏らしてはいけません。情報が漏れてしまうと取り返しのつかないことになる可能性もあり、情報漏洩が起きないように公務員の副業は禁止されています。また、情報漏洩が起きてしまうと自治体の信用失墜にも繋がるので注意が必要です。

職務に専念する義務

職務に専念する義務とは、勤務時間内は職務上の注意力や時間を職責遂行のために用い、政府がしなければならない責任を果たすための職務にのみ従事しなければならないという法律のことです。

公務員の副業禁止の理由は先述にて解説しましたが、公務員がアパート経営するにはどうしたら良いのでしょうか。公務員がアパート経営をするための条件について詳しく見ていきましょう。

条件下であればアパート経営は可能

原則公務員の副業は禁止ですが、ある一定の条件を満たせばアパートの経営が可能になります。その条件は以下の通りです。

  • 5棟10室より小さい規模
  • 家賃収入は年間500万円未満に
  • 管理業務を自ら行わない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

条件1. 5棟10室より小さい規模

1つ目の条件はアパートの規模です。5棟10室以上のアパートを経営することは、営利目的の不動産投資となるため公務員が行うと違反になります。

そのため公務員がアパート経営を行う場合は、4棟9部屋以下の規模に抑える必要があります。これ以下の規模であれば営利目的とみなされないため、公務員でもアパート経営が可能です。

条件2. 家賃収入は年間500万円未満に

2つ目の条件は家賃収入です。アパート経営の主な収入源は家賃になります。しかし、公務員の場合は、その家賃収入にも条件があり、年間500万円未満に抑えなければなりません。

仮に年間家賃収入が500万円以上になってしまうと、1つの私的事業と捉えられるため公務員が行うと違反になってしまいます。違反にならないためにも年間500万円以上の家賃収入がないようにしましょう。

条件3. 管理業務を自ら行わない

3つ目の条件は管理業務に関してです。公務員は「職務に専念する義務」があるため、アパートの管理業務を自ら行うことはできません。そのため管理会社にアパートの管理を依頼する必要があります。アパートの状況を全て自分で把握したいという方もいるかもしれませんが、違反になり処分を受けてしまう可能性もあるので控えましょう。

条件を満たさない場合は申請する必要がある

先述した3つの条件を満たさない場合でも申請することでアパート経営ができる可能性があります。例えば、生前贈与や相続でアパートを取得した場合などであれば公務員でも問題なく行えるかもしれません。

しかし、申請を忘れてしまうと違反になり処分を受けるリスクがあるので、条件を満たさないと分かったらすぐ申請するようにしましょう。申請に必要な書類やタイミング、申請が通りやすいケースなどについて詳しく見ていきましょう。

申請に必要な書類

申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)
  • 不動産管理の委託契約書
  • 物件の概要書
  • 貸借条件の一覧表

上記の書類を用意し承認を得られればアパート経営が始められます。ただし、各都道府県や各市町村によっては提出書類が異なる場合もあるので、所属している会社の所属長や人事課に確認することをおすすめします。

申請するタイミング

申請するタイミングに決まりはありませんが、アパート経営を始める前には済ませておくと良いでしょう。申請には時間がかかる上、後回しにしてアパート経営を始めてしまうと、違反になり処罰を受けるリスクが高まります。そのようなトラブルを回避するためにも、申請は早めに行うようにしましょう。

申請が許可されやすいケースとは?

先述した条件を超える場合でも申請することでアパート経営が認められることがあります。認められやすいケースとして以下の例が挙げられます。

【相続により不動産を得た場合】
相続によって不動産を得るケースは公務員でも多くあります。公務員の規則に違反するからといって、退職を迫ったり、不動産を売却させたりすることはできません。そのため、相続で不動産を得たのであれば、条件を満たしていなくても許可されやすいです。

【転勤や生活環境などが理由で賃貸物件にする場合】
転勤や離婚などで空き家となった物件を賃貸に出す場合も許可されやすいです。ローンの返済などがあり賃貸に出さざるを得ない場合があるため、比較的許可されやすいのです。しかし、このような状況でも賃貸に出す前に、職場で相談することをおすすめします。

申請が通りにくいケースも紹介

公務員が営利目的でアパート経営を始めた場合は、申請が通りづらく時間がかかる可能性があります。これは公務員の副業が認められていないことが理由として挙げられるでしょう。

しかし、先述したアパートの規模や家賃収入の上限、アパートの管理に気を付ければ申請をしなくてもアパート経営をすることができます。今後公務員の副業が認められることがあるかもしれませんが、現状は原則禁止なのでアパート経営を始める場合は条件内で行うようにしましょう。

公務員がアパート経営をする4つのメリット

公務員がアパート経営を行うメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。挙げられるメリットは以下の通りです。

  • アパートなどのローン審査が通りやすくなる
  • 不労所得が得られる
  • 相続税対策にも有効
  • 少ない資金でも始められる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

アパートなどのローン審査に通りやすくなる

公務員は社会的信用が高い職種といえます。そのため、さまざまなローン審査に通りやすくなるでしょう。

ローン審査は勤続年数や貯蓄、個人の所属先などを見られますが、公務員は職種、収入ともに安定しているため他の職業に比べ審査に通りやすいのです。

不労所得が得られる

不労所得とは働かずに得られる収入のことです。公務員としての給料はもちろんですが、それに加えアパート経営で得た家賃収入が発生するので経済的に余裕ができ貯蓄がしやすくなります。またアパートの家賃は一定なので安定した収入が得られるのも魅力です。

相続税対策にも有効

アパート経営は相続税対策にも有効です。アパートで相続すると、現金で相続するよりも税金が低くなります。たとえば、1億円を相続する場合、アパートで相続するか現金で相続するかで、相続税の金額に約数倍の差が出てくることもあります。

また、相続であれば公務員でもアパート経営が許可されやすいケースに該当するので、アパート経営が始めやすいかもしれません。

少ない資金でも始められる

アパート経営や不動産投資には多くの資金が必要で、これらは一般的に金融機関から融資を受けます。金融機関から融資を受けるには審査があり、カギとなってくるのが返済能力です。

公務員は職種、収入ともに安定しているため、審査に通りやすいということは先述しましたが、信用度の高さから低金利で融資が受けやすいです。アパート経営でローン返済額が減らせる点は公務員ならではなのかもしれません。

公務員がアパート経営する場合の注意点

公務員がアパート経営するには注意点もいくつかあります。一般企業勤めの方でも、気にしなければならないことは多々ありますが、公務員の方はそれ以上に気にすべきことがあります。特に注意しなければならないのは以下の3点です。

  • 収入に制限がある
  • 想定外のリスクが起こる可能性がある
  • 確定申告が必要になる

想定外のリスクや確定申告が必要なのは企業勤めの方も一緒ですが、特に収入に制限がある部分は公務員ならではの注意点です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

収入に制限がある

公務員がアパート経営をする場合、家賃収入は年間500万円以下に収めるという条件があります。この条件を守らずに所得を増やすと違反に該当する可能性があります。

過去に公務員が制限を守らずに減給処分になったケースは多く、最悪の場合は懲戒処分を受けるリスクもあります。所得の制限を超えないように常に注意をしておきましょう。

想定外のリスクが起こる可能性がある

日本は地震や台風など自然災害が多い国です。そのため、これらの災害に備えておくことが大切になります。たとえば国土交通省が発表しているハザードマップを参考に、災害の少ない地域を選んだり、火災や地震保険に加入したりするなどしておくと安心です。

また、アパートは経年劣化していくので、部屋やアパートの状態も管理会社に任せきりではなく、自分でも気にしておく必要があります。劣化や破損が目立つ場合は修繕を、コロナ禍で置き配などがメインになってきたので宅配ボックスを設置するなど、状況に合わせてリフォームしていくことで入居者の満足度にも繋がるでしょう。

確定申告が必要になる

アパート経営で利益が出ている場合は確定申告をする必要があります。これは公務員に限らず会社勤めや自営業の方でも同じで、確定申告を怠ると申告によって納める税金に加え、無申告加算税が課されるので注意が必要です。

確定申告には収支の証明となる領収書が必要となるので捨てずに保管しておきましょう。また、確定申告の期間は通常2月16日〜3月15日ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で延長されることもあるので都度国税庁の公式サイトで確認するといいかもしれません。

確定申告を行ったことがなく書き方がわからない場合は、税務署で教えてもらえるので相談してみると良いでしょう。また、時間がない場合は税理士への依頼もおすすめです。

まとめ

公務員は原則副業が禁止されていますが、一定の条件下ではアパート経営が可能です。条件を満たさない場合でも申請が通れば許可が下りる可能性もあります。

また確定申告や経営状況の確認など大変なことも多いかもしれませんが、公務員として働きながら不労所得まで得られるようになると、生活が楽になることはもちろん、趣味にお金が費やせるようになります。こちらの記事を参考に、アパート経営を検討してみてください。