家賃収入の税金シミュレーション!家賃収入を得るときの税金はいくら?
2023年7月25日土地活用の手段として、賃貸経営をしている方も少なくないと思います。賃貸経営による家賃収入は、不動産所得として課税対象です。
しかし、実際のところ計算が複雑で億劫になってしまう方も多くいることでしょう。
そこでこの記事では、家賃収入にかかる税金の種類や計算方法について詳しく解説します。家賃収入に課せられる税金について気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
家賃収入の税金シミュレーション〜実際に計算してみよう〜
実際に、家賃収入にはどれくらい税金がかかるのでしょうか。ここからは、家賃収入を得るときにかかる税金の計算方法についてそれぞれ解説していきます。
①不動産所得を計算する
家賃収入の税金をシミュレーションするには、まず不動産所得を計算する必要があります。
実は家賃収入の金額が、そのまま不動産所得になるわけではありません。なぜなら、所得とは実質的な利益のことを指すためです。不動産所得を求めるには、家賃収入から必要経費を差し引く必要があります。
家賃収入とは毎月の賃料のみではなく、入居時の礼金や更新料、管理費や駐車場代などの賃貸経営によって生じた収入が含まれます。実際に計算してみましょう。
②総合課税の合計所得金額を計算する
総合課税とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算することです。このとき、損益通算といって一部の所得は赤字があった場合に相殺が可能です。
このように、合計した所得金額のことを「課税標準」といいます。
③所得控除を行う
課税標準から、各条件ごとの所得控除を差し引きます。扶養家族や配偶者がいる場合などに、所得控除が受けられます。
④納付税額の計算
課税標準から所得控除を差し引いた額に、所得税・住民税それぞれ決められた税率をかけた額が納付税額です。税率に関しては、この後に詳しく解説します。
⑤税額控除を行う
条件に当てはまる税額控除を受けることができれば、求めた納付税額から差し引くことが可能です。税金を安く抑えるのは必須の項目なので、確実に計算するようにしましょう。
⑥納付税額が決定
課税標準から所得控除を引き、所得税・住民税の税率をかけることで納付税額が算出できます。そこから、条件に当てはまる税額控除を差し引いた後に残った金額が、納付税額です。
⑦経費計上できる項目を確認し計算する
家賃収入による不動産所得を算出する場合、必要経費を差し引くことが可能です。節税にもなるため、どのような費用が経費として計上できるのかを知っておくことも重要です。見落としがないようにしましょう。
ここでは、どのような費用が経費として計上できるのかを解説します。
ローン金利分・管理委託手数料
住宅ローンの借り入れがある場合、返済金額ではなく金利部分のみが経費として計上できます。金利の額は、金融機関などから送付されるローン償還表などで確認可能です。
また、賃貸物件の管理業務を管理会社に委託している場合には、管理委託手数料も経費として計上できます。
原状回復費用や修繕費用
賃貸経営では、入居者が退去したあと次の入居者を募集するためにも、クロスや壁紙の張り替えや設備の入れ替えといった原状回復が必要になることがあります。
このとき、入居者による故意や過失による汚れや損傷であれば、その費用を請求することができます。しかし、それ以外の経年劣化はオーナーが費用を支払う必要があります。
また、賃貸物件の外壁や外構などの共用部分の修繕費も定期的に必要です。修繕費用を見越して家賃に上乗せされているケースもありますが、これらの費用は賃貸経営において必要な経費として計上することが認められています。
減価償却費用
減価償却費用とは、建物の購入にかかった費用を毎年経費として少しづつ計上していく費用です。
減価償却費用は、【建物の購入価額×償却率】で算出可能です。償却率は建物の構造や耐用年数によって異なります。
火災保険料・地震保険料
火災保険や地震保険などの損害保険に支払う保険料も経費として計上できます。
住宅ローンを組む場合火災保険は加入が必須ですが、地震保険は任意です。しかし、万が一の災害の際には、莫大な被害も想定されるため、任意であっても加入するオーナーが多いのが現状です。
租税公課
租税公課とは、国や地方自治体に納める租税と公共団体などに納める公課をあわせた勘定科目のことです。
この租税公課の中にも、経費として計上できるものがあるため、条件に合うものが無いか調べておくと良いでしょう。
その他経費
上記で紹介したもの以外にも、経費に計上できるものはいくつかあります。下記のような経費も必要経費として計上できるので、条件が合うかどうか確認しましょう。
- 確定申告や登記申請の代行を専門家に依頼した際の報酬
- 物件の管理や契約に関する交通費・水道光熱費
不動産所得にかかる税率
不動産所得にかかる税金の額は、課税所得の額によって変動します。不動産所得以外に給与所得などの収入がある場合には、合算する必要があります。
所得税の税率
所得税の税率は、所得金額によって異なり、所得金額が多くなるに従い税率も上がっていきます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
参照元:「国税庁公式HP」
所得税額は、【課税所得額×税率-控除額】で求めることが可能です。
住民税の税率
住民税には、前年の所得をもとに算出される「所得割」と、所得額に関係なく一律で課せられる「均等割」の2種類があります。住民税とは、1月1日の時点で住民登録している都道府県や市区町村の自治体に納める地方税の1つです。
また、住民税は所得金額をもとにして算出されます。若干の地域差はありますが、基本的には都道府県民税が4%、市町村民税が6%となっています。
【年収別】家賃収入の税金計算例
賃貸経営をしている方の中には、本業を持ちながら副業として行っている方も少なくありません。そこでここからは、本業の収入と副業の家賃収入がある場合の税金計算について、青色申告の場合と白色申告の場合の差額も併せて解説していきます。
年収500万の場合
青色申告 | 白色申告 | |
所得税 | 230,800円
(内家賃収入分91,900円) |
244,700円
(内家賃収入分105,800円) |
住民税 | 331,000円
(内家賃収入分90,000円) |
341,000円
(内家賃収入分100,000円) |
社会保険料 | 743,750円 | 743,750円 |
合計 | 1,305,550円
(内家賃収入分181,900円) |
1,329,450円
(内家賃収入分205,800円) |
年収500万円の場合の税金計算は上記のようになり、青色申告の場合と白色申告の場合の差額は、【23,900円】です。
年収900万の場合
青色申告 | 白色申告 | |
所得税 | 837,900円
(内家賃収入分183,800円) |
858,300円
(内家賃収入分204,200円) |
住民税 | 631,500円
(内家賃収入分90,000円) |
641,500円
(内家賃収入分100,000円) |
社会保険料 | 1,228,950円 | 1,228,950円 |
合計 | 2,698,350円
(内家賃収入分273,800円) |
1,329,450円
(内家賃収入分304,200円) |
年収900万円の場合の税金計算は上記のようになり、青色申告の場合と白色申告の場合の差額は、【30,400円】です。
年収1500万の場合
青色申告 | 白色申告 | |
所得税 | 2,442,000円
(内家賃収入分303,300円) |
2,473,800円
(内家賃収入分336,900円) |
住民税 | 1,197,100円
(内家賃収入分90,000円) |
1,207,100円
(内家賃収入分100,000円) |
社会保険料 | 1,572,450円 | 1,572,450円 |
合計 | 5,209,750円
(内家賃収入分393,300円) |
5,253,350円
(内家賃収入分436,900円) |
年収1,500万円の場合の税金計算は上記のようになり、青色申告の場合と白色申告の場合の差額は、【43,600円】です。
【サラリーマン必見】家賃収入が赤字の場合は損益通算
先述したように、賃貸経営で家賃収入を得ている方の中には本業を持つ方も少なくありません。そのようなケースで家賃収入が赤字になった場合には、損益通算という仕組みがあります。
損益通算とは?
損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することです。
所得の中には、税法上損益通算ができるものとできないものとがありますが、不動産所得は損益通算が可能です。
サラリーマンなどの給与所得がある場合、不動産所得で出た赤字を給与所得と損益通算することによって、課税所得を下げることができます。
節税よりもキャッシュフローを大切にしよう
不動産所得を赤字にして損益通算によって節税することは可能ですが、不動産投資を目的とする多くの方にとっては、節税よりもキャッシュフローを大切にすることをおすすめします。
キャッシュフローとは、手元に残る金額のことです。せっかく不動産投資として賃貸経営をしているのに、赤字になってしまっては意味がありません。
申告の上では赤字になっていても実際のキャッシュフローは黒字である、という状態が望ましいと考えられます。
そのためにポイントとなるのは、実際の支出がなくても経費として計上できる減価償却費です。建物の建設費や購入費などは、全額を1度に計上せず耐用年数で分割します。その結果、現金の支出がなくても経費が計上できるのです。
つまり、経費として計上できる額が大きいと、その分キャッシュフローが残るということです。
損益通算できる所得・できない所得を紹介
所得の中には、損益通算できる所得とできない所得があります。
税法上の所得には、不動産所得のほかに給与所得・退職所得・事業所得・譲渡所得・山林所得・利子所得・配当所得・一時所得・雑所得と全部で10種類あります。
このうち、損益通算できる所得は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4種類です。
不動産所得の損益通算の計算方法
では、実際に不動産所得の損益通算はどのように計算するのでしょうか。ここでは、例を挙げて計算方法を解説します。
【5,000万円の物件に対し、4,500万円のローンを組み購入した場合】
ローンの利子支払いは117万円とし、この利子を建物と土地の分に分けます。建物2,500万円、土地2,000万円に按分すると比率は5:4です。117万円の利子を5:4で分けると、計算式は【117÷(5 + 4)×4=52】となるため、土地取得の分のローンにかかる利子は52万円となります。
つまり、不動産所得が赤字になった場合には、この52万円という額と比較して赤字額の方が大きい場合にその超過分を損益通算に加算可能です。
まとめ
家賃収入には、主に所得税と住民税がかかります。家賃収入における税金をシミュレーションするには不動産所得や所得控除、必要経費などさまざまな項目の金額も把握することが必要です。
税率の計算や減価償却についてなどわかりにくい項目もありますが、安定して不動産投資を継続していくためには必要な知識ともいえます。
この記事を参考に、難しい税金計算も簡単にシミュレーションしてみましょう。